Accessを業務システムではなく「教育・研修用」に使いたい、あるいは研修で作ったものをそのまま運用に引き継ぎたい──そんな悩みを持つ方は意外と多いです。
「説明したら動いたけど、翌週には誰も直せない」「ちょっと仕様を変えたら壊れてしまった」などの苦い経験もよく聞きます。
でも、正しく作ると、研修成果がそのまま資産になります。
この記事では、「初心者に引き継ぐときに困らないAccessアプリ設計」のノウハウを、なかぜん流にお伝えします。
Accessを教育・研修用途で使うメリット
実践型で学べる──理論だけで終わらない
Accessはデータベース・VBA・UI設計と、複数の技術要素が詰まっているので、研修で「座学+実践」で扱いやすい教材になります。
小~中規模の業務要件に対応できる
Accessはそこそこのレコード量(数千〜数万件)でも十分動きます。学習フェーズと実業務の橋渡しに最適です。
研修成果をそのまま業務に活用できる
設計を工夫すれば、研修で作成したAccessアプリをそのまま本番運用にも活かせます。引き継ぎやすさがポイントです。
初心者に引き継ぐときに困らないAccess設計のポイント
命名規則の統一
フォーム・テーブル・クエリ・モジュールには一貫したプレフィックスを使いましょう。
- テーブル:tbl_顧客
- フォーム:frm_顧客入力
- クエリ:qry_受注集計
- モジュール:mod_共通処理
処理はモジュールに分離する
フォームイベント内には最低限の処理だけを記述し、実装の大半はVBAモジュールへ。以下は一例です:
' 登録ボタンのクリックイベント(frm_受注登録)
Private Sub btnRegister_Click()
If Not mod_受注.z登録処理(Me!txt顧客ID, Me!txt商品ID) Then
MsgBox "登録に失敗しました", vbExclamation
Else
MsgBox "登録完了しました", vbInformation
End If
End Sub
' mod_受注 モジュール
Public Function z登録処理(lng顧客ID As Long, lng商品ID As Long) As Boolean
On Error GoTo ErrHandler
CurrentDb.Execute "INSERT INTO tbl_受注 (顧客ID, 商品ID) VALUES (" & lng顧客ID & "," & lng商品ID & ")", dbFailOnError
z登録処理 = True
Exit Function
ErrHandler:
Call zログ出力("登録失敗", Err.Description)
z登録処理 = False
End Function
マスタ管理・初期データ登録をフォーム化
マスタデータ(顧客・商品など)を直接テーブルで編集させず、フォームやインポートボタンを用意しましょう。
エラー処理・ログ記録を仕組みにする
エラー発生時にログを自動記録して、後から原因を追えるようにします。
ドキュメントを必ず添付する
最低限、以下のような内容をWordまたはPDFで添えましょう。
- 命名規則
- フォーム構成図
- 主要なモジュールの役割
- 修正時の注意点
注意点・よくあるミス
1. 複数人同時使用には不向き
Accessは基本的に単一ユーザー向け設計です。共有フォルダで同時に開くと不具合が出ることも。
2. データ量が増えると極端に遅くなる
10万件を超えるデータを扱うなら、SQL Server連携を検討した方が良いです。
3. モジュールが複雑になりすぎる
1つの関数に複数の役割を持たせないように注意。関数は「1つの責務」に分けるのが鉄則です。
応用ポイント
フロントエンド・バックエンド分離
データベースとフォームを別ファイルに分けることで、配布や修正が容易になります。
CSV・Excel連携の仕込み
外部との連携も視野に入れておくと、後の拡張性がグッと高まります。
差分適用スクリプトの用意
バージョンアップ時のSQL変更やマクロ変更を記録しておけば、移行がスムーズです。
まとめ:引き継げるAccessで、研修成果を“資産”に
Accessは使い方次第で「一過性の研修ツール」にも「将来の業務資産」にもなります。
初心者に渡す前提で設計しておけば、将来の運用・保守コストが激減します。
- 命名規則・モジュール分離で構造を明確に
- ログ・エラー処理で安心の仕組み化
- ドキュメントで次の人をサポート
まずは小さな顧客・受注管理アプリから試してみてください。
なかぜんも、あなたの「教育から実務へ」の一歩を応援しています!